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天体感測のススメ

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宇宙を感じる生活

パンスターズ彗星の尾の謎

世間的にはパンスターズ彗星の話題はすっかりなくなりましたが、実はまだまだ写真にも撮られています。
先週、ヒロシ君(口径32cmドブソニアン望遠鏡の愛称)を使って自宅から見たら、微かに尾が見えましたよ(^^)

空の暗い環境で写真を撮るとこんな素晴らしい彗星の姿になっています。
これは地元の同好会のKさんが富士山周辺で撮影された写真です。(Kさんありがとうございます!)
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パンスターズ彗星 2013/5/31 23:08 120sec×3コンポジット 100SDUFⅡ400mm ISO1600 D700

実は4月上旬あたりから何かおかしいな?と思い始めたんですよね。

何がって、それは「尾の方向」です。

別の彗星の写真と比べてみましょう。(左は自分の写真、右はKさんの写真です)
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黄色の点線で囲んだ部分が「ダストの尾」と呼ばれるものです。
彗星から放出されたダスト(塵)が太陽光の放射圧(光圧)に吹かれて伸びている様子が見えています。彗星が高速で移動していくため尾は太陽と正反対の方向にならず、曲がって見えます。
ヘールボップ彗星の方で見えている青色の尾は「イオンの尾」と呼ばれるものでこちらは太陽と正反対の方向に伸びます。

そして、おかしいなと思った尾は「謎?の直線の尾」と書いた尾のことです。
一般的には逆に伸びた尾(テイル)ということで「アンチテイル」と言われます。
アンチテイルは、ダストの尾が薄く広がった平面を横から見たら濃く見え、見かけの方向によって太陽の方向に伸びて見えます。

この尾の変化をKさんの写真で見てみましょう。5月5日から22日の写真です。
それぞれ、「彗星の中心から太陽のある方向」に線を伸ばしてみました。
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アンチテイルと太陽方向との角度が、段々と狭くなっていっているのが分かりますね~。

しかし、観測しているのは地球から見た「見かけの姿」です。以前、パンスターズの模型を作ったように、三次元で考える必要があります。
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彗星の尾が彗星軌道面にあると仮定すると、写真を彗星軌道面に投射したとき(図の?のところ)の、アンチテイルの姿が知りたいわけです。(彗星の軌道面上にあると仮定した理由は、後の補足で説明します)
ちなみに楕円を描いている彗星の軌道面上に太陽があります。地球が太陽の周りを回っているように、彗星も太陽の引力の影響で周りを回る天体だからです(模型では地球のほぼ円軌道に比べ、彗星の軌道は大きく楕円になった、ほんの一部だけ見えています)

目的は決まったので、後は計算あるのみです。
今回は太陽の方向や彗星の方向をステラナビゲータという天文シミュレーションソフトを使い、彗星の尾の方向を写真から読み取り、懐かしい高校の代数幾何「平面と直線」を使って彗星軌道面上での位置を求めます(^^)

図の?のところに出てきた結果がこちらです!
b0253922_22195947.png
なんと、謎の直線の尾(アンチテイル)の方向は、太陽の方向でもなく、太陽の正反対の方向でもなく、
「太陽の正反対の方向から65~70°の方向でほぼ固定」
になっていました。(注意:こちらは先ほどまでの太陽の方向に対しての角度ではなく、正反対の方向からの角度で表わしています)
グラフの単位の「AU」とは「天文単位」で、太陽と地球の距離を1とした単位です。携帯電話の会社のことではありません。
模型上に表わすとこんな感じです。
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見かけではアンチテイルと太陽方向との角度が段々と狭くなっていっているように見えましたが、実は「(少なくとも5月は)ずっと方向は変わっていない」ということになります!

ここまでわかって、じゃあ、この尾は何なんだ!と言われると・・分かりません(爆)

アンチテイルの説明で言われる「彗星の軌道面上に薄く広がったダストの尾を横から見たら濃く見える」の部分に関しては、彗星軌道面に近い5/22や5/31の尾がとても長く伸びていることからも説明がつきます。(ちなみに5/31の彗星のアンチテイルの尾の長さが3800万kmと出ました。長い!!)
しかし、ただ軌道面上に広がっているだけだったら、こんな風に特定の方向には伸びませんからね。

さっぱり分からないので、ここは自分で考えて楽しむチャンス!ということで(^^)
色々な説を立ててみています。
例えば、彗星の自転軸が謎の尾の方向で、そちらにダストが特別多く噴出されているから・・とか
・・・(^^;)
いやいや、この説も自分でも納得いかない(笑)
星の世界も色々なことが事前にシミュレーションで分かってしまう時代ですが、不思議を前にするとやっぱり自然を相手しているんだなって思います。

4月上旬から悩み始めてもう2ヶ月。
いい加減ネット上のどこかで誰かが説明してくれているかな~と思って期待しているのですが、
探し方が悪いのか中々見つからないのでブログに書いてみました。
ご存知の方はぜひ教えてください(笑)




ここからは専門的な補足です。

先ほどは、謎の尾が彗星の軌道面にあると仮定して話を進めましたが、もともと謎なんだからそんな仮定をしていいのか?というツッコミができると思います。
自分も5月の上旬あたりまでは、三次元的にどう考えたら良いのかさっぱり分かりませんでした。
Kさんの5月5日~13日の写真をもとに太陽方向からの角度をグラフにしてみたところ、偶然とはいえ、ちょうど地球が彗星の軌道面を通過する5月27日頃に0°になりました。
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その日に地球から彗星を見ると謎の尾が太陽の方向に見えることになります。
もし、謎の尾が彗星軌道面上にない場合は、地球が彗星の軌道面上の位置にあるときに地球から彗星を見ると、尾は太陽の方向や太陽の正反対の方向とは関係のない方向に向くはずです。つまり、謎の尾が彗星の軌道面上にあるということです。
グラフではその後の5月22日と31日のデータを追加していますが、予想通りの変化をしていきました。面白いですね。
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by star-feel | 2013-06-09 20:07 | 天体感測(実測編) | Comments(12)
Commented by ひろし at 2013-06-14 21:22 x
見事なパンスターズ彗星の尾っぽですね!私などは彗星の尾っぽうの向きを見てもまったく疑問に思いませんでした(^^;; さすがです。拝見すると、データになんらかの法則性がありそうに思えますが、理由は???・・・(^^; 解が見つかることを願っております!
Commented by NGC at 2013-06-14 22:33 x
はじめまして
アンチテイルはhttp://milesmathis.com/comet.pdf
これを読んでみて下さい。
確かに説明ないんですけどね。
彗星の軌道の線を書いて、それに直交した線と太陽方向の線となす面を地球から見たらどうなるかという風にみたらどうでしょうか?
Commented by star-feel at 2013-06-15 19:27
ひろしさん
見事な写真ですよね。Kさんはこれらの写真を富士山周辺で撮影されています。やっぱり空の暗さの環境の違いは大きくて、自分も6月上旬に自宅から撮影してみましたがアンチテイルはほとんど分からないくらい微かでした。ひろしさんならしっかり撮れたかも知れませんけどね(^^)
Commented by star-feel at 2013-06-15 19:37
NGCさん
はじめまして!情報を教えていただきありがとうございます。一般的な曲線のアンチテイルの説明も、分かり易い図になっていますね。こういう図が書きたかったと思いました(笑)しかし後半から自分の理解が付いていけず・・せっかくの情報を生かせずすみません。NGCさんのおっしゃる軌道の線に直交する線は軌道面上にあると考えたら宜しいでしょうか。
Commented by NGC at 2013-06-16 00:56 x
http://www.astroarts.com/simulation/cometary-orbit-j.php
まず軌道ビュアーを使ってみたらどうでしょうか?
アンチテイルは彗星が軌道上に放出したチリやガスが太陽光を受けて反射して見えているものです。その層がまだ薄いので、軌道面を地球通過する前後が見やすいのは反射率が最大になるからです。
軌道ビュアーで地球とパンスターズ彗星が重なるように5/27にやってみてください。予想通り太陽方向になるはずです。
Commented by star-feel at 2013-06-16 10:05
NGCさん
こんな素朴な疑問にお付き合いいただきましてありがとうございます(^^)今回の記事の中ほどに書きましたが、おっしゃる通りの一般的なアンチテイルの説明に関しては理解いたしております。それは上から2番目右の画像、パンスターズ彗星の黄色の点線に囲まれたダストテイル部分に相当しますね。軌道面を通過した際に反射率が最大になって尾は伸びて見えると思います。
しかし説明がつかないのは同じ写真に「謎?の直線の尾」と書いた部分です。彗星軌道面に投影してみたところ、5番目の画像の通り、通常のアンチテイルでは説明がつかない特定の方向に伸びていました。つまり、もう1本、何か特別な尾があるように考えられます。計算で彗星の位置も尾の方向も3次元座標で求めたので、任意の視点から見ることができるのですが、上手く図でお見せできないのが残念で申し訳ないです。私の分かりにくい文章ですみませんが、疑問なところはお分かりいただけますでしょうか。
Commented by NGC at 2013-06-16 14:43 x
すいません。
5/5の写真をよく見てみました。小さい画像でよくわからない所もあり、ダウンロードしてカメラの向きとか私も検証しなおして見ました。
太陽方向はあっています。
カメラの撮影向きがKさんには失礼ですが、北が全く上になっていない構図で、観測用ではないので位置関係把握に手間取りました。
http://pholus.mtk.nao.ac.jp/COMET/comet_handbook_2004/1-4.pdf
これはシンクロダイン曲線のダストテイルの理論でいわれている計算をするとわかると思いました。
βというパラメータを変化させて計算させるとたぶん0.3くらいの大きさになるのではないかと思います。ダストのテイルがかなり曲がってできるもので、大きな彗星ではよく見られるものです。
この日ではまだアンチtテイルは見えないですものね。
失礼しました。
Commented by star-feel at 2013-06-16 23:07
NGCさん
ご確認ありがとうございます。向きは観測用に撮影されていないものを掲載させていただいたのでしょうがないのですが、私の方で回転させて黄極を上にでもしておけば良かったですね。
分かりやすいダストテイルの理論の資料を教えていただきありがとうございます。βを決めることができれば、解決の糸口になりそうです(^^)
ちなみにNGCさんのおっしゃっているβ=0.3の尾は、今回のブログ記事の上から2番目画像で言うとどちらを指しておられますか?黄色の点線で囲んだ方の「一般的なダストの尾」の方でしょうか。それとも「謎の直線の尾」の方でしょうか。
あと、上から3番目の画像のどの日付の写真にも謎の直線の尾が写っており、全てアンチテイルと定義されるのかなと勝手に思っていました。この謎の直線の尾は4月上旬から既に現れています。
ダストテイル理論で謎の尾が説明できるとするとβが2種類あると考えたら良いのかな?と思うのですが・・これはじっくり計算して考えてみますのでしばらくお時間をください。
Commented by NGC at 2013-06-17 23:53 x
黄色い囲まれたものではなく、なぞの尾の方を指しています。
この当たりは、まだまだ研究段階ですから、天文台の渡部潤一教授とか関係者のご専門だと思います。
彗星は自転していたりして、放出されたタイミングとその方向がまちまちで、特定方向に出たりでなかったりといろいろあるので、尾が変化して見えるわけです。しかも、放出された粒子の物性を反映して運動が変化するということです。
私も渡部先生の「アマチュアのための太陽系天文学」とか基本的な本を読んだ程度の知識しかありませんので、これ以上は天文台の相談室に直接ご相談いただいた方がいいと思います。
Commented by star-feel at 2013-06-19 05:15
NGCさん
早速お返事いただきありがとうございます。
β=1の軌道接線に放出&等速運動のダストだけを並べたら5月から6月の彗星の位置だとちょうど謎の尾の方向になるかもと思い始めたところでしたので意外でした。頭の中だけで考えていてもだめみたいですね(^^;)ダストテイルの理論を読んでいたら、等速運動のダストはどこまでも等速で運動できるのか?などなど、ますます質問したくなってしまいました(笑)ゆっくり自分で解決していこうと思います。
アドバイスありがとうございます。相談してみます。
Commented by NGC at 2013-06-19 21:37 x
そこまで考えられていらっしゃるのでしたら、彗星会議とかいろいろありますから参加されてみてはどうでしょう?

Yarkovsky 効果とか調べてみてください。
では、また進展がありましたら、ご報告ください。
Commented by star-feel at 2013-06-20 22:12
NGCさん
進展がありましたら報告いたしますね。
ご親切に色々と情報を教えていただき本当にありがとうございました。

by star-feel