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天体感測のススメ

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宇宙を感じる生活

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銀河M82に現れた超新星爆発の凄さを体感してみたい!と思い、膨張速度を測ってみました。
私にとって人生初の試みでした。
詳しい説明は後にして、撮影した画像と結果のグラフからお見せしますね。
b0253922_18453858.png
撮影データ:2014/1/31 21:34 FC76+NikonD5100 分光StarAnalyzer100+3.8°prism ISO1600 露出120秒 3枚コンポジット 神奈川県秦野市にて

前回ご紹介した(→M82銀河の超新星爆発)の超新星と銀河M82が、左側に縦になって小さく写っています。(前回の画像はトリミングしてあるので大きく見えています)
そして、右側に虹色に写っている部分が、超新星の「光の色の成分」を表わす「スペクトル」です。
色が綺麗ですよね~(^^)
分光器という特殊な光学部品を入れているので、この場合、星の右側にそれぞれの「スペクトル」が写るのです。(普通に撮影したときと分光器を入れて撮影したときの比較は、最後の補足を参照してください)

よーく見てみると、超新星のスペクトルだけ、他の星のスペクトルと大きく違っていることに気が付きましたか?
そう、青→緑→赤と並んだ色の赤色のところが、急に暗くなっていますよね!
実は、この暗くなったところを使って、超新星爆発のガスの膨張速度を求めることができるのです。ほんとに?って感じですよね(^^)

正確に膨張速度を測るために、このスペクトルの輝度をグラフにしたのが、こちらのグラフです。横軸を、色を数値化した「波長λ」に変換していますが、画像と同じように左が青色、右が赤色になっています。(カメラの感度特性をある程度補正してあります)
b0253922_2112413.png

超新星のスペクトルの赤色が暗くなって見えたところは、このグラフの「SiⅡ」と書かれた凹んだところになります。Siとはシリコンもしくはケイ素と呼ばれる元素です。

さて、膨張速度はどうやって測るのでしょうか?
今回の超新星までの距離は遠すぎて、爆発が広がっていく様子なんてとても見ることはできません。

「ドップラー効果」という言葉は聞いたことがあると思います。そう、救急車が自分に近づく時と遠ざかる時で音程が変わる、あれです。
あれと同じことが光の世界でもおきています。
超新星爆発によってガスが猛スピードで広がっていて、その中の自分に向かって飛んでいるガスの、「音程」に相当する光の成分が変化するのです。光の場合は、音程に相当する違いが「色の違い」になって現れます。
地球で観測される猛スピードで近づくガスのイメージは、こんな感じです。(大きさや距離は全くデタラメです)
b0253922_2329259.png
図1のうち、図2のこちらに向かって飛んでいるガスが、ドップラー効果によって波長が変わって見えるのです。

ではもう一度、超新星のスペクトルのグラフを見てみます。
実は、SiⅡの凹んだところが本来は「635nm」と書かれた位置になるはずのものなのですが、「609nm」と書かれた位置に写っていたのです。つまり26nm分だけ色が青色側に変化したことになります。

このズレ量を、光のドップラー効果として膨張速度を計算すると・・・

「12300km/s」 (観測の精度は高くなく、誤差は10%程度見込まれます)  計算は下の補足参照

と出ました! 速っ!!

この速さを感じたいですよね。計算してみると・・
・地球1周に3.2秒    →すごい速さですね。
・月まで約30秒     →わかりにくい?
・1光年進むのに約24年 →意外と遅い?   
となりました。

しかし、超新星爆発の膨張速度を、自分で撮影して求めることができるなんて驚きです。しかも比較的小さな望遠鏡で、分光器も教育用の安価なものでしたから。できるもんなんですね~。
この膨張速度は段々遅くなるそうです。超新星自体が暗くなっていくので、いつまで観測できるか分からないですが、変化も「感測」してみたいです。
<9/6追記>膨張速度の変化を捉えました→リンクはこちら

今回使った分光器StarAnalyzer100は、4ヶ月前に手に入れたものなんですが、使い方に慣れてきて面白いものが見えてきました。また順次紹介していきますね。



<補足>

・普通の画像と分光器を入れて撮った画像を、交互に表示してみるとこんな感じになります。星から一定間隔離れた右側に、スペクトルが現れているのがわかりますか?(色の階調が落ちているのはgifアニメーション画像にしたためです)
b0253922_1075397.gif

・ 膨張速度が分からない状態では、ドップラー効果の量がわからないのに、どうしてSiⅡの位置が特定できるのって疑問に思いませんでしたか?実は必要な情報を予め手に入れていたからです。
 それは、今回の超新星がIa型というタイプということ。
 Ia型のスペクトルの特徴が決まっているらしいので、SiⅡの吸収線がどれだか分かった訳です。
 また、過去のIa型の超新星のスペクトルデータも参考にしています。

・スペクトルの凹んだところは吸収線(吸収帯)と呼ばれます。

・高校物理を思い出せる方は、図3のような図を見たことがあるかも知れません。特定の波長に吸収線が現れるという実験です。(※よくある図ではガスバーナーにNa等をかざしますが、この図では省略してあります。何か特定のガスがあるとお考えください。)ガスを猛スピードで動かすと吸収線の色がドップラー効果によって変わります。

・光のドップラー効果で膨張速度を求めた計算式は、⊿λ/λ=v/c です。
 吸収線のずれが⊿λ=26nm 、SiⅡのλ=635nm、光速 c=300000km/s を代入して
 v= ⊿λ/λ*c = (26/635)*300000 = 123000km/s となります。簡単ですね~。
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by star-feel | 2014-02-23 00:34 | 天体感測(実測編) | Comments(0)

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